投稿者: fantegutt_books

  • インゼル文庫 続々入荷中です

    インゼル文庫 続々入荷中です

    6月末から臨時休業をいただいており(詳細はこちらを参照ください)、その後も諸事情で少しゆっくりな再開になってしまっているのですが、人気のインゼル文庫を入荷中ですので今日はそのことについて少し。

    インゼル文庫の歴史や特徴に関しては過去のnoteをお読みいただけたらと思うので今回は作品についてのみ紹介します。

    ①1034番 フリードリヒ2世『青ひげ』

    グリム兄弟による童話「青ひげ」をベースに、プロイセン王フリードリヒ2世が教会批判したとされる風刺作品です。

    1787年にドイツ語訳されたシャルル・ペロー版の「青ひげ」に用いられた木版画の挿絵もお楽しみいただけます。

    ②1425番 ” Peter Rabbit und seine Freunde “

    おなじみビアトリクス・ポターによる「ピーター・ラビット」ドイツ語版です。

    ピーター・ラビットと仲間の繰り広げるお話が8篇収録されています。

    シンプルな装幀も美しく、インテリアにもおすすめの一冊です。

    ③450番 「マネッセ写本」

    1280年頃から1330年頃までに作成されたとされる、ドイツの代表的な宮廷詩人140人の愛の歌を収録した大型豪華彩飾写本「マネッセ写本」より、24作品が収録された1冊です。

    シリーズの中でも人気なようで何度も版を重ねており、表紙も版によって何種類かあるのですが、この1999年版の表紙は中身に劣らずとても鮮やか。眺めているだけで楽しくなります。

    ④507番 ヴィルヘルム・ブッシュ ” Hernach “

    1865年に出版された絵本「マックスとモーリッツ」が現在でもカルトな人気を誇る、19世紀ドイツの絵本作家ヴィルヘルム・ブッシュによるスケッチ集です。

    コミックのような描写は、のちの漫画や風刺画にも世界的な影響を与えたといわれています。

    スケッチでありながら制作時の息遣いまで聞こえてきそうな、臨場感のある一冊です。

    ⑤1438番 マイヤー=タッシュ ” Die Buchstaben der Philosophie “

    P.C.マイヤー=タッシュがAからZまでのアルファベットを軸に、アリストテレスからツァラトゥストラまで26人の哲学者を取り上げ、彼らの説く「よりよい人生」ための思想を短く美しくまとめた小さな哲学本です。

    他にも古いものから新しいものまで、インゼル文庫各種取り扱い中です。ラインナップは下記のリンクから、写真や詳細は各商品ページにてご確認ください。

    https://fanteguttbooks.stores.jp/?category_id=65ad89c5b4efa238caa7d226

    お気に入りの一冊が、見つかりますように。

  • ハインリヒ・フォーゲラーの描いた、美の楽園とその行方

    ハインリヒ・フォーゲラーの描いた、美の楽園とその行方

    ひとめぼれをするように、一瞬で好きになってしまうアーティストというのがときどきいるのですが、ドイツの画家ハインリヒ・フォーゲラーもそんなひとりでした。

    はじめてフォーゲラーの作品を目にしたのは、インゼル文庫からも出されている『Dir(あなたに)』ではなかったかと記憶しています。パステルカラーで描かれた、花やユーゲントシュティールの装飾。繊細なタイポグラフィーで綴られたロマンチックな詩と、その詩が捧げられたのであろう、やわらかな線で描かれた女性の姿。

    初めて見たはずなのに、子供の頃から知っていたような、それともフォーゲラーのこの作品にいつか出会うことを昔から知っていたような、おかしな郷愁。その日からというもの、ハインリヒ・フォーゲラーという名前は私の中で特別なものとなりました。

    19世紀末、ブレーメンの北東20㎞ほどのところにあるヴォルプスヴェーデ村に作られた芸術家コロニーに魅了されたフォーゲラーはその地に「ユーゲントシュティールの理念を体現した総合芸術作品」とされる家、” バルケンホフ (Barkenhoff) “を建てます。自然と芸術が調和する楽園を夢見たフォーゲラーの作り上げた家は外観からインテリア、庭までどこをとっても彼の理想とした美しさが詰まっており、フォーゲラー自身も「この家は私のすべてだ」と語っていたそうです。

    バルケンホフは詩人のリルケも訪れるなど、アーティストたちの集う場所となり、愛する女性とも出会ったこの頃のフォーゲラーの作品はとても詩的で、うっとりするような色彩の中、まるで夢の中にいるような世界が描かれているのですが、同時にそれがいつまでも続かないのが分かっていたかのような、少しの諦めや不安が見えるような気もします。

    ヴォルプスヴェーデで理想の世界を求め、夢見ていたはずの家庭を築きながらも、芸術家コロニー内部の対立や妻マルタとの関係悪化など、幸せは長くは続きませんでした。第一次世界大戦を経験したフォーゲラーは社会主義へ傾倒し、作品もそれまでの抒情的な様式から一転して、プロレタリア風のポスターやプロパガンダ的な表現へと大きく変化していきます。

    美の追求から人間と社会の幸福へ理想を拡大していったフォーゲラーは、ナチスの台頭によりソ連に亡命しアーティストとしての表現を続けるも、最期はドイツ人であるからとスパイ容疑で収容所に送られ、1942年、祖国には帰ることのないまま命を落とします。

    時代の波にのまれ、華やかだったヴォルプスヴェーデ時代には思いもしなかったであろう晩年を送ったとされるフォーゲラーですが、どんな思想であれ自らの理想を追い求めた人生は、果たして語られているほど不幸だったのだろうか。運命は厳しいものであったけれど、自らの思いを貫き闘いぬいた人生、フォーゲラーが「あの頃に戻りたい」と思うことは果たしてあったのだろうか?と、モスクワ時代の作品を見ながら、ふと思ってしまうのです。

    ファンテギュット・ブックスでは、フォーゲラーに関する書籍を各種取り扱っております。詳細はこちらのページからどうぞ。
    https://stores.jp/search?q=vogeler&store=fanteguttbooks

  • フリッツ・バウムガルテンの描いた理想郷

    フリッツ・バウムガルテンの描いた理想郷

    こんにちは、ファンテギュット・ブックスです。
    今日は姉妹で大好きな、フリッツ・バウムガルテン ( Fritz Baumgarten ) の絵本についてお話しようと思うのですが、その前にドイツ語のファーストネームについて少し。

    子供が生まれることになって、さあどんな名前にしよういうときに、漢字と響きの組み合わせで数えきれない選択肢や可能性のある日本に対し、ドイツではすでに存在する名前を選んでつけるのが一般的です。

    ヤーコブやマリア、ノアやパウルなど、キリスト教に由来する名前が一番多くて、次にゲルマン語由来のもの、アレクサンダーやクラウディアなど古代ギリシャ・ラテン語由来のものや、家族のルーツや趣味によってはニルスなど北欧系や、アーニャなどスラブ系に由来するものもあります。

    どんな由来があるにしても、名前にはそれぞれ意味があって、個人的な意見ではあるのですが、たとえば清らかさや信仰心を意味するクリスティーナという名の人はまっとうな人生を送っている優等生タイプ、男らしさを意味するアンドレアスは、小さいことは気にしない安心感のある人が多かったりと、日本でもいう「名は体を表す」ということわざは的を射ているなあと思うのです。

    さて、そんなことを思いながら考えたのが、小人たちや小動物が森で暮らす様子を多く描いたドイツの絵本作家、フリッツ・バウムガルテンのことでした。

    Fritz Baumgarten - Die Waldschule
    Fritz Baumgarten - Die Fahrt ins Wunderland

    1920年代から1960年までの間に、500点を超えると言われる作品を遺したバウムガルテン。「フリッツ」というのはフリードリヒの愛称で、意味は「平和をもたらすもの」。バウム(=木)ガルテン(=庭)という苗字もあいまって、作品とのフィット感にあらためて頬がゆるんでしまいました。

    あまり情報がない作家ではあるのですが、フリッツ・バウムガルテンの人生は、時代に翻弄された、本人の望んだ世界とはかけ離れたものだったのではないかと思うのです。

    1883年ライプツィヒに生まれ、はじめは絵葉書やカードのデザインで生計を立てていたバウムガルテンは、ふたつの世界大戦で徴兵・徴用されたり、家が爆撃にあったりといった憂き目にあいます。戦後も東ドイツにいたバウムガルテンですが、西ドイツの出版社と連絡を取り、検閲を逃れるため自身の作品を「甥や姪のための本」として西側に送り、報酬を物資で受け取っていたこともあったそうです。

    ここからは想像の範囲でしかないのですが、♪森の木陰でどんじゃらほい♪と小人たちが歌うのが聞こえてきそうな、平和でゆかいなバウムガルテンの描いた森の世界は、戦時・戦後の荒廃した都市で、彼自身が望んだ理想郷だったのではないかと思うのです。

    ほっとしたいときに手に取り、表紙を開きたくなる、バウムガルテンの絵本。
    現在ファンテギュット・ブックスで取扱中の、バウムガルテンの本はこちらからどうぞ。
    https://stores.jp/search?q=Baumgarten&store=fanteguttbooks

    お気に入りの一冊が、見つかりますように。

  • ◆イルムガルト・ギエールが紡いだ刺繍とタペストリーの歴史

    ◆イルムガルト・ギエールが紡いだ刺繍とタペストリーの歴史

    ゆっくりと時間をかけて、何かを自分で作り出す作業--刺繍や編み物、お裁縫などの手仕事には長年憧れを抱きつつも、なかなか本格的に始めることができずに時が過ぎてしまっているのですが、今日ご紹介するのはそんな気持ちをいつも思い出させてくれる、イルムガルト・ギエール(Irmgard Gierl)による図案集です。

    ドイツ・バイエルン地方の民族学者であるイルムガルト・ギエールは、刺繍文化や民族衣装の研究にも詳しく、当店でもこれまで『Die schönsten Stickmuster aus aller Zeiten(古くから伝わる美しい刺繍パターン)』など、いくつか刺繍の図案集を扱ってきました。

    表紙からすでに美しいのですが、ページをめくると、ヨーロッパのおばあちゃんのおうちや伝統的な民族衣装に見られるような、美しい刺繍のパターンが次々と現れます。どれもすてきで、ひとつのパターンに絞るのはとても難しそう。

    当店では、イルムガルト・ギエールの図案集というと、これまではそういった、家庭で世代を超えて伝わってきたであろう伝統的な刺繍パターンをテーマにしたものを扱ってきたのですが、先日少し毛色の違うものを入荷してみました。

    古いものでは15世紀から、ヨーロッパの人々の暮らしの中にあった壁掛けの織物、タペストリー。その多くには丁寧な刺繡がほどこされており、単なる装飾としてだけではなく、その家の物語を紡いだもの、家を守る祈りの象徴など、当時の人々の生活にとって大切な意味があったそうです。

    イルムガルト・ギエールはそんな古くから伝わるタペストリーの刺繍の柄を、刺し方から糸の種類、染料まで細かく研究し、さらに失われている部分は文献から補い、現代でもそれらの柄を再現できるよう図案として構築しなおしました。

    ①ドイツの伝統刺繍図案集 Irmgard Gierl ” Gestickte Bilderbogen ” 1991年
    https://fanteguttbooks.stores.jp/items/69c3d4f27c149e0735efadf8

    ②ドイツ伝統刺繡 図案集 イルムガルト・ギエール ” Stickmotive aus alten Mustertuchern ”
    https://fanteguttbooks.stores.jp/items/69ce588fd9c1577ae4159f5b

    ③ドイツ伝統刺繡 図案集 イルムガルト・ギエール ” Irmgard Gierls Stickmusterschatz “
    https://fanteguttbooks.stores.jp/items/69cf82821a112f3d45abbad3

    これらの図案集自体が1980~90年代に出版されたもので、インターネットやAIをはじめ、その頃からの時代の変化も目を見張るものがあるのですが、ギエールの成し遂げた仕事は、やはり自身の目で確かめ、情熱をもって研究したから、現在でも私たちを魅了してやまないのではないかと思うのです。

    この図案集が日本の誰かに届き、伝統を紡いでいっていただけると嬉しいなあ(そして私もいつかその一人になりたいなあ)と思っています。

  • ◆古書を通じた時間旅行

    ◆古書を通じた時間旅行

    前回のブログでも少し触れたのですが、ファンテギュット・ブックスは日本とドイツで離れて暮らす姉妹で運営しており、XやインスタグラムなどのSNSでも両方がつぶやいています。noteStoresのニュースは基本姉が担当していますが、妹も気が向いたらときどきアップしています。

    さて、先日noteで「今はもうない場所」という記事をアップしたのですが、今日はそんな過去への時間旅行ができる古書を紹介したいと思います。

    ①チェコの犬の写真集 ” Zivot je pes… ” Frantisek Dostal 1987年

    エリオット・アーウィットにも認められたというチェコのストリート・フォトグラファーFrantišek Dostál による、街角の犬のスナップを集めた写真集。人々や子供たち、街の様子がまさに80~90年代の雑誌『オリーブ』の世界で、もう戻れないあの頃、今では本の中でしか出会えない当時の街並みに、想いを馳せてしまいます。カレル・チャペック『ダーシェンカ』が好きな方にもおすすめしたい一冊です。

    https://fanteguttbooks.stores.jp/items/69c0feab6e449598b7191ede

    ②ナン・ゴールディン写真集 ” The Ballade of Sexual Dependency ” ドイツ語版

    自身を含む80年代の若者の日常が綴られた赤裸々な日記のような、ドラマのような作品。「コンプライアンス」という言葉を誰もが知るようになった現在ではおそらく生まれないのではないか、とつい思ってしまったり、「性的マイノリティ」という言葉は広まったものの、この頃から何が変わったのだろう、と思ったり。深く考えながら見るのもよし、パラパラとめくって80年代の雰囲気を楽しむのもよしな一冊です。

    https://fanteguttbooks.stores.jp/items/699ebe5b6cb68c6bad7d079c

    ③90年代アメリカの写真集 ” Auf der Suche nach Freiheit ( Die bibliophilen Taschenbücher Nr. 588) “

    数々の独特なテーマで「Bibliophile (愛書家)」を楽しませてくれる、1970年代にドイツで刊行されたシリーズDie bibliophilen Taschenbücher。こちらは主にアメリカの原風景の写真で知られるスイス人写真家クリスチャン・ヘーブによる写真集です。1980-90年頃のザラザラとしたアメリカの雰囲気をお楽しみいただける一冊です。

    https://fanteguttbooks.stores.jp/items/68b65ef400d7d51548716c08

    ④ミニブック イギリスの風景 Klaus Moritz ” Reise nach England “

    旧東ドイツのグラフィックアーティスト、クラウス・モーリッツの、イギリスへの愛が詰まった作品集です。今はもうないであろう、昭和のイギリスの街角の風景がカラー・白黒で収められています。

    https://fanteguttbooks.stores.jp/items/69ce3307871146216f4f0931

    ⑤アンドレ・ケルテス 写真集 ” Andre Kertesz ” 1978年

    ハンガリー出身で、写真をモダンアートに昇華させた存在としてのちの世代に影響を与え続ける写真家、アンドレ・ケルテス。専門的な知識がなくとも、彼の作り出す詩的な世界と、どこを旅しても出あうことはないかもしれないザラザラとした過去の質感に、心をつかまれる人は多いのではないでしょうか。1ページ1ページ、その世界をじっくり味わいたい写真集です。

    https://fanteguttbooks.stores.jp/items/69a00eff155f2d0e7a5ff41e

    ファンテギュット・ブックスでは今日紹介した本のほかにも、古書を通じた時間旅行ができるような古書を取り扱っております。ぜひごゆっくりと、オンラインショップを覗いてみてください。

    また、思い出の一冊を探すお手伝い『Buchfinder』サービスもご好評いただいております。詳しくはこちらのページをご覧ください。

  • ◆こんにちは、ファンテギュット・ブックスです。

    ◆こんにちは、ファンテギュット・ブックスです。

    初めましての方も、すでにオンラインショップやnote、その他SNSでつながっている方も、ご覧いただきましてどうもありがとうございます。

    すでにご存じの方には情報が重なってしまうかと思いますが、私たちは岡山県倉敷市に住む妹と、ドイツ南部の田舎町に暮らす姉とでタッグを組んで2024年に始めたオンラインの古書店です。

    なぜ古書店を始めたのか、については、こちらのnoteの記事をご覧いただけたらと思います。

    https://note.com/fantegutt_books/n/n829dce52bac5

    今後こちらのブログでは、主に新入荷や本に関することを綴っていこうかと思っています。noteでは、引き続きレシピや旅の記録など、あまり本に関係のないことをときどきアップしていく予定です。どうぞよろしくお願いいたします。